日本を愛するロシア最高の小説家、アクーニンとは何者か?

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Всем привет! みなさんこんにちは。Ecomのユリヤです。みなさんは他の国の人に出会った時、どんな話をしますか?せっかくの異文化交流の機会、どんな質問をしましょう。私が一番よく聞かれる質問の一つは、「ロシアの人って、日本や日本人のことどう思ってるの?」です。以前も記事にしましたが、ロシア人は日本に「片思い」をしています。

 

さて、今回はその質問の答えとしてよく登場してもらう人物をご紹介します。

現代ロシアが誇る小説家、ボリス・アクーニン先生(本名:グリゴーリイ・チハルチシヴィリ)です。「アクーニン」というペンネームは…そう、日本語の「悪人」から取られています。彼は熱心な日本研究家であり、その推理小説の中には日本人や日本文化が多く登場してきます。

 

日本を愛するロシア最高の小説家、アクーニンとは何者か?

 

多くのロシア人は日本に深い関心を持っているので、単純に注目されたくて日本っぽいテーマを取り入れる小説家も多くいます。そのほとんどが残念ながら、結構うさんくさい感じで書かれていると個人的には思います。

ただ、アクーニン先生だけは本当に深く研究を重ねた分、日本文化の理解が正確で知識も豊富です。日本育ちの私が読んでも、大変興味深く感じます。

ここでは、私が個人的におすすめする作品をご紹介いたします。3つとも日本語に翻訳されていますが、特に沼野恭子先生の翻訳は、ロシア語を読んでいるのと変わらないくらい素晴らしく訳されています!本当におすすめですよ。

 

その1:『堕ちた天使 ―アザゼル』(沼野恭子訳 作品社, 2001年) – 原題 Азазель (1998)

 

2002年 のフランス・ミステリ批評家賞を受賞、2003年 の英国推理作家協会 ゴールド・ダガー賞にノミネート、さらには映画化もされている作品です。舞台は1870年代で、一言でいうと青二才の主人公が謎の自殺事件を解決していく物語です。

その中で彼が恋や失敗もして、厳しく汚れた世の中にぶつかっていく様子を描いています。素直に国家のために役立ちたいと考える若き青年が政治の内側を知り、それでも最後まで正義感いっぱいの心で挑んでいきます。エンディングの、本当に最後の最後まで読者は惑わされます。この作品の見どころは、他の小説などではあまり描かれることのない警察官の仕事の様子や、当時の政治運動を感じ取ることができる点だと思います。

 

その2:『リヴァイアサン号殺人事件』(沼野恭子訳 岩波書店, 2007年) – 原題 Левиафан (1998)

 

2005年のガムシュー賞最優秀ヨーロッパ・ミステリ賞にノミネートされ、日本でも2007年に「本格ミステリベスト10」 の8位に選ばれています。
この作品の舞台は豪華客船リヴァイアサン号で、主人公のファンドーリン(『堕ちた天使 ―アザゼル』の青二才)が戦争を生き抜き、今度は日本へ向かいます。そのため日本についての様々な書籍を読んで文化研究をしています。

また、同じ船に日本人の男性もいて、彼の日記も紹介されています。彼は武士の息子で嫌々留学を終えて母国に戻ってくる、コンプレックスの塊のような真面目な人という設定です。そして、彼の日記こそロシア人が思い描く日本人像のような気がします。細かい話ですが、例えば日記の初めに「晴れ」「曇り」と天気を書く習慣は、ヨーロッパではありません。日記の書き方一つとっても全く違う日本に、この作品で惹かれて行ったロシア人は多いでしょう。

 

その3:『アキレス将軍暗殺事件』(沼野恭子・毛利公美訳 岩波書店, 2007年) – 原題 Смерть Ахиллеса (1998)

 

「リヴァイアサン号殺人事件」での日本赴任から数年ぶりにモスクワに戻ったファンドーリンによる、政治事件の解決を描いています。

興味深いのは、ファンドーリンが日本人の執事を連れてくるなどして、様々な日本文化をロシアに持ち込んでいる点です。作品の中でファンドーリンとその執事は日本式のお風呂に入ったり、日本の武術の練習をしたりしています。この執事のキャラクターは、頑固で真っ直ぐ主人に命がけで仕える人です。ロシア人の心を掴む理由がわかりますね。

この3つの作品はミステリー好きだけでなく、歴史好きやロシア語を勉強している人にもおすすめです。日本語の翻訳は本当にレベルが高いので、2つを比べても楽しめると思いますよ。

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